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映画「オデッセイ」の分かりにくい場面を解説します

  最終更新日:2016/11/23

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映画「オデッセイ」解説

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 このページは最初に本記事を投稿した時点では存在しなかった内容です。「リッチ・パーネル・マヌーバ」で検索して訪れる方も多いので、4ヶ月も経ってから追記しました。

リッチ・パーネル・マヌーバ

 地球に帰還するために減速予定だった宇宙船ヘルメスを逆に加速させ、火星へと戻り、再び地球へ帰還するまでの一連の軌跡をリッチ・パーネル・マヌーバと呼んでいます。このマヌーバの一番の目玉は、地球の重力を利用してヘルメスを加速させるフライバイです。おそらく、フライバイ(別名:スイングバイ)について知識のある方は、劇中のリッチ・パーネルがホッチキスを利用した説明で理解できたと思います。あれはユーモアも合って分かりやすかったのですが、フライバイについて良く知らないと分かりにくかったかもしれません。

 2010年に小惑星イトカワからサンプル採集して地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」をご存じの方も多いと思います。「はやぶさ」もフライバイで加速してイトカワに向かっています。フライバイは、惑星や恒星の重力を利用して宇宙船の運動方向を変える技術です。「はやぶさ」もヘルメスも加速フライバイによって、地球の重力を利用して機体を加速させています。フライバイを行う理由は燃料を節約するためです。また、燃料を節約できればより多くの荷物を載せられます。

 と言うことで、フライバイについて説明します。

 上の画像はWikipediaの相対性理論の記事のものです。地球の空間のゆがみを2次元の曲面で表した図です。地球の重力の影響が、地球を中心としたすり鉢状になっていると考えて下さい。

 ここからは、動画を使って説明します。上の動画は、すり鉢状の曲面に球体を転がした時のものです。すり鉢に向かって球体を転がすと向きを変えて外へ飛び出して行きます。よく見るとすり鉢に近づいた時の初速と外に飛び出した時の速度が同じになり、すり鉢の中心に近づいた時に速くなっています(実際は摩擦抵抗があるので徐々に速度が低下)。この模型は、地球が静止した状態だとした仮定した時のものになります。しかし、実際の地球は太陽に対して公転しています。

 上の動画は、回転しているすり鉢状の曲面に球体を転がした時のものです。これが実際のフライバイに近い模型になります。撮影角度が残念で分かりにくいのですが、初速に対してすり鉢の外へ飛び出した時の速度が増していることが分かります。速度が増している理由は、すり鉢自体の回転速度が球体に加わったからです。これと同じことが実際のスイングバイでも起こっています。

 イメージ的にはこれでおおむね理解して頂けたのではないかと思いますが、より詳しい説明はWikipediaのスイングバイの記事をご覧下さい。

 再び映画の話に戻ります。ヘルメスはフライバイにより地球から再度火星へと戻り、ワトニーを助け、今度は火星の重力を利用したフライバイにより地球へと帰還しました。ここまでの説明で分かってもらえると思うのですが、ワトニーを助けた時は火星フライバイをしながらなのです。ヘルメスは火星公転軌道をかすめながら、ワトニーを打ち上げたMAVとの相対速度を合わせなければならず、相当無茶な事をやっていることが分かります。以上を踏まえてワトニーが火星を離れて救出されるまでのシーンを改めて見ると、色々と違って見えてくるのではないでしょうか。

 しかし、この映画でフルネームを一番憶えてもらっているキャラクターは、ワトニーではなくリッチ・パーネルではないかと思うのは私だけでしょうか。