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原作本を読んで映画「レヴェナント 蘇えりし者」を観に行きました

  最終更新日:2016/07/12

レヴェナント 蘇えりし者

 原作本を読んで、映画「レヴェナント 蘇えりし者」を観に行きました。昨年から映画館で予告編を見て興味があったのですが、アカデミー賞3部門を獲得したと言うことで、益々興味をかきたてられました。

 本記事ではあらすじやキャラクターについて触れていますが、致命的なネタバレは特にありません。

 2016年4月29日追記:ネタバレ全開の解説記事を書きました。よろしければこちらの記事(映画「レヴェナント」の疑問点を解説します)もどうぞ。

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あらすじ

 ヘンリー隊長が率いる罠猟師隊は、ミズーリ川のほとりのベースキャンプで獲物から毛皮をはぎ取っていた。そこにアメリカ・インディアンのアリカラ族による襲撃を受ける。獲物を追っていた主人公のヒュー・グラスとその息子のホーク(インディアンのポーニー族との混血)は襲撃の音を聞きつけてキャンプ地に戻るが、アリカラ族を撃退できずにヘンリー隊の生き残りと一緒に逃げる。

 その道中でグラスはグリズリー(ハイイログマ)に襲われ瀕死の重傷を負ってしまう。グラスを担架で運んで砦を目指すが、険しい山を登って運ぶことをヘンリーは断念する。そこで、余命わずかに見えるグラスを看取るため、2名をその場に残すことにした。ホークとブリジャーが手を挙げ、大金に釣られたフィッツジェラルドの3名が残ることになった。

 グラスに対して元々反感を持っていたフィッツジェラルドはグラスを殺そうとするが、ホークに見つかり、グラスの目の前で彼を殺してしまう。また、アリカラ族が近くに迫っているとブリジャーに嘘を伝え、グラスを置き去りにする。なんとか生き延びたグラスは、最愛の息子を失った悲しみを胸にフィッツジェラルドに復讐するために追跡を開始する。

原作

 テレビCMで「事実に基づく物語」と言っている通り、ヒュー・グラスは実在の人物です。1823年8月、アメリカのサウスダコタ州のグランド川の支流近くでグリズリーに襲われ、瀕死の重傷を負い、仲間の裏切りで置き去りにされながらも生還しました。

 グラスの史実を下敷きにアメリカ人のマイケル・パンクが描いた小説が本作です。小説は実際の出来事に沿って書かれているのでフィクション部分も多いですが、大筋は史実の通りに進行します。

 その原作小説を元にストーリーを再構成したのがこの映画になります。そのため、映画は史実とはかなりかけ離れたストーリーになっており、原作本は原案と言ったほうが良いかもしれません。原作本を読んでから映画を見ると「あれ?」と思う事が多いものの、映画は映画で良い作品に仕上がっていると思います。史実ではグラスに息子はいませんが、息子の存在がグラスの個性や感情をより際立たせ、特にフィッツジェラルドに対する復讐心を強調しています。

 史実ではフィッツジェラルドはグラスの装備品を奪って見捨てただけなので(それでも十分ひどいですが)、もしフィッツジェラルド本人がこの映画を見たら「俺はこんなひどい男じゃない!」と怒りそうです。

 原作と映画ではストーリーが全く別物になっているので、原作本も読んでみるとより本作をより楽しめると思います。

感想

 星5つ評価の星4つです。グラスはほとんど喋らないし、人によっては退屈な作品と思えるかもしれませんが、部分的には原作を超えていると思いました。ただし、ご都合主義的な展開もあったので、その点だけマイナス評価です。

 原作通りにグラスが生還するまでを描くと、おそらく退屈な映像になっていたでしょう。原作では装備品のほとんどを持ち去られてしまうので、ほとんど道具がないところから、いかに食べ物を確保するかと言う話になっています。小説ではグラスの内面も含めて描くことができるので問題ないですが、映像にするとサバイバル生活しているだけになってしまうのではないでしょうか(原作では生還後に復讐への探索行が始まります)。

 サバイバルに関しては、生魚や生肉を食べるシーンがあるので、苦手な人は嫌悪感を覚えるかもしれません。すぐそばで火を起こしているのに生魚を食べていましたが、それだけ肉に飢えていたと言うことなのだと思います。

 映像がとにかく素晴らしかったです。自然光(太陽光と火)だけで撮影した映像は臨場感があり、自然の恐ろしさを特に感じました。驚くことに物語の時系列に沿って撮影したそうです。良く考えると自然光で時系列をばらばらに撮影すると昼間の風景が不連続に見えてしまいそうなので、必然的に時系列順に撮影したのだと思われます。撮影場所はカナダとアルゼンチンで、撮影期間に9ヶ月も要したのは納得です。

 グラスがグリズリーに襲われるシーンは特に真に迫っていました。このシーンで登場するグリズリーはCGです(そうは見えないですが)。部分的にCGを使用しているそうなのですが、本作ではCGはほとんどないそうです。具体的には、このシーンと馬に乗って崖から転落するシーン、バイソンの群れなどです(多分)。ちなみに、崖から転落した馬の死体は作り物です。

 アカデミー賞を受賞しただけあって、レオナルド・ディカプリオの演技も良かったです。グリズリーに首をかき切られて声を出せない状態が長いため、逆に高い演技力が要求されます。単純な復讐劇ではなく、家族愛の要素も加わっているので、グラスの性格に深みが加わっているように思いました。

 フィッツジェラルド役のトム・ハーディの演技も憎たらしさ満点で良かったのですが、個人的にはブリジャー役のウィル・ポルターも良かったです。映画「メイズ・ランナー」で初めて見て良い役者だと思ったのですが、もっと主役に準じる立場での演技を見てみたいです。

 音楽は坂本龍一が担当しています。静寂を感じさせる音楽が映像と合っていました。特に印象に残ったのは打楽器を中心にした旋律です。音楽だけ聴くとそこまで印象に残るメロディはなかったように思うのですが、映像と合わさることで映画の良さを引き出していたと思います。

 映画は2時間36分のとても長い作品ですが、また見てみたいと思わせる内容でした。これから映画館で観る人は上映前のCMも含めると3時間近くなるので、それなりに準備して見てみて下さい。

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パンフレット

レヴェナント パンフレット

レヴェナント パンフレット

 価格は税込み720円、サイズは横長の縦226mm×横300mm(A4より縦が16mm少し大きい)です。全ページカラーです。画像は表面のみですが、裏面はほぼ真っ白なので割愛しています。

 内容は、冒頭のあらずじ、ディカプリオとイニャリトゥ監督のインタビュー、プロダクションノート(製作記事)です。あとは評論家の記事などがあります。記事の内容に特に不満はないのですが、思ったほどキャストの写真が載ってない印象です。ただし、1ページ丸々場面写真が掲載されているページが11ページあります。横長のページなので一般的なパンフレットよりも写真サイズは大きいです。

 せっかく坂本龍一が参加しているのにインタビュー記事がないのは不思議でした。公式サイトにはあるんですが……。

 全体的な感想は、映画に感動した人は買いだと思いますが、可もなく不可もなくと言った印象です。