*

今から始める録画サーバの運用方法とおすすめパーツ

  最終更新日:2019/02/02

録画サーバの運用方法とおすすめパーツ

 これから録画サーバを作りたい人向けに運用方法とおすすめパーツを紹介する記事です。

 情報が古くならないよう、本記事は不定期に更新しています(最終更新日:2019年02月02日)。

スポンサーリンク

録画サーバの運用方法

 録画サーバは24時間稼働が基本となります。録画直前にスタンバイ状態から復帰させる運用方法もありますが、録画時刻とスタンバイ復帰時刻を連動させるのが難しいです。かなり面倒そうなので私自身行っていません。そのため、省電力PCで24時間稼働させるのが一番楽な運用方法だと思います。

 24時間稼働でも省電力PCならば1ヶ月の電気代を数百円で済ませることも可能です。省電力PCに関しては、「省電力PC向けおすすめハードウェア構成」と言う記事を書いています。省電力PCの組み方は、そちらの記事をご覧下さい。

 ハードウェア構成を最初に悩むところですが、録画ファイルの保存方法も事前に決めておくべきです。MPEG2-TSのまま保存するなら大容量のHDDが必要になります。H.264やH.265にエンコードして保存するならば、ある程度CPU性能が欲しくなるでしょう。また、CMカットなどの編集作業をどうするかも検討材料になるでしょう(CMカットはcomskipなどである程度自動化可能)。

 なお、見て消し目的で録画サーバを作る事はおすすめしません。その場合、安いレコーダーを購入したほうが断然楽です。自分で便利に使いやすくしていく過程を楽しめる人でないと長続きしないのではないでしょうか。

録画サーバのためのCPU

 24時間稼働することを考えるとCeleron、Pentium、Core iシリーズの超省電力モデル(型番の末尾がT)などの省電力なCPUがおすすめです。しかし、H.264などのエンコードを短時間で行いたい場合、通常版のCore iシリーズをおすすめします。省電力なCPUだとエンコードに時間がかかります。

 出力解像度や設定パラメータにもよりますが、CeleronやPentiumだとエンコードに実時間以上の時間がかかると思って下さい。毎日多数の番組をエンコードする場合、運用が難しくなる可能性もあります。

 参考までに、MPEG2-TSファイルからH.264へのFFmpegを使ったエンコード時間を紹介します。ファイルは、アニメ:甲鉄城のカバネリ 第1話(録画時間30分7秒)を使用しています。コマンドラインの実行内容は以下の通りです。固定品質(CRF値)は23固定にしています。

time ffmpeg -i 甲鉄城のカバネリ.ts -vcodec libx264 -s 1280x720 -threads 0 -acodec copy -crf 23 甲鉄城のカバネリ.mp4

 エンコード時間はCPUと出力解像度の違いで以下の様な結果になります。実行環境のOSは全てLinuxです。

CPU 出力解像度 エンコード時間
Celeron J1900 1024×576 30分13秒
1280×720 46分13秒
Core i5 6600 1024×576 8分0秒
1280×720 12分42秒

 Celeron J1900では、出力解像度1024×576の場合に録画時間とエンコード時間がほぼ等しくなっています。なお、CRF値を小さくすれば画質は良くなりますが、エンコード時間は伸びます。個人的にエンコード時間は録画時間未満にしたいので、Celeron J1900では出力解像度1024×576が限度かなと思います。

 Core i5 6600のエンコード時間はCeleron J1900の約4分の1になっていることが分かります。これぐらい短いとストレスなくエンコードできます。

 なお、ベンチマークソフトのPassMark - CPUマルチスレッドの結果(以下の表)を見ても、Core i5 6600はCeleron J1900の4倍の値となっているのが分かります(CPUが今となっては古いので参考にCore i3 8100を追加)。

CPU PassMark
Celeron J1900 1848
(535)
Core i5 6600 7771
(2095)
Core i3 8100 8065
(2101)

 新たに録画サーバを作る際に検討対象となりそうなCPUを一覧表にまとめました。CPUの簡易仕様、ベンチマーク結果(マルチコアとシングルコア)を一覧にしています。

CPU Clock Core
(Thread)
TDP PassMark 最安値
Celeron G4900 3.10GHz 2(2) 54W 3289(1788) \5,903
Celeron G4920 3.20GHz 2(2) 54W 3302(1828) \6,982
Pentium G5400 3.70GHz 2(4) 54W 5193(2182) \9,432
Pentium G5500 3.80GHz 2(4) 54W 5198(2184) \10,921
Pentium G5600 3.90GHz 2(4) 54W 5683(2276) \12,744
Celeron G4900T 2.90GHz 2(2) 35W 2960(1681) 参考:\5,470
Pentium G5400T 3.10GHz 2(4) 35W 5048(1871) 参考:\7,980
Pentium G5500T 3.20GHz 2(4) 35W 4218(1816) 参考:\9,480
Core i3 8100T 3.10GHz 4(4) 35W 7483(1829) 参考:\13,980
Core i3 8300T 3.20GHz 4(4) 35W 7796(1885) 参考:\16,980
Core i5 7400T 2.40GHz 4(4) 35W 6436(1697) \27,280
Core i5 7600T 2.80GHz 4(4) 35W 8097(2106) \29,251
Core i5 8400T 1.70GHz 6(6) 35W 9688(1931) 参考:\21,980
Core i5 8500T 2.10GHz 6(6) 35W 10053(2051) 参考:\23,480
Core i5 8600T 2.30GHz 6(6) 35W 10913(2209) 参考:\25,980
Core i7 8700T 2.40GHz 6(12) 35W 12648(2352) 参考:\36,480
Core i3 7100 3.90GHz 2(4) 51W 5781(2228) \14,040
Core i3 7300 4.00GHz 2(4) 51W 6386(2313) \24,376
Core i3 7320 4.10GHz 2(4) 51W 6541(2364) \25,406
Core i3 8100 3.60GHz 4(4) 65W 8065(2101) \15,479
Core i3 8300 3.70GHz 4(4) 62W 8695(2168) \19,958
Core i5 7400 3.00GHz 4(4) 65W 7336(1950) \21,578
Core i5 7500 3.40GHz 4(4) 65W 8022(2114) \24,624
Core i5 7600 3.50GHz 4(4) 65W 8768(2294) \28,411
Core i5 8400 2.80GHz 6(6) 65W 11629(2335) \26,976
Core i5 8500 3.00GHz 6(6) 65W 11894(2407) \27,919
Core i5 8600 3.10GHz 6(6) 65W 12662(2515) \30,024
Core i7 7700 3.60GHz 4(8) 65W 10739(2347) \37,778
Core i7 8700 3.20GHz 6(12) 65W 15140(2628) \38,858
Athlon 200GE 3.20GHz 2(4) 35W 4972(1633) \6,418
Athlon 220GE 3.40GHz 2(4) 35W -(-) \7,862
Athlon 240GE 3.50GHz 2(4) 35W 5114(1805) \9,266
Ryzen 3 2200G 3.50GHz 4(4) 65W 7317(1829) \10,939
Ryzen 5 2400G 3.60GHz 4(8) 65W 9274(1935) \17,753

 ベンチマーク結果はPassMarkのものです。CPU名のリンク先は各CPUの仕様ページです。最安値(2019年02月02日現在)のリンク先はAmazonの商品ページです。なお、最安値=Amazon価格ではないのでご注意下さい。結果を収集出来なかった数値は”-”としています。

 Core i7 7700Kなどのオーバークロック対応品も消費電力が高いため除外しています。

 価格を”参考”としているCPUは全て価格.comで取り扱いがないバルク品です。バルク品はCPUクーラーが付属しないため、別途購入する必要があります。参考価格は全てパソコンSHOPアークの2018年4月30日時点ものです。

 Ryzen APUを定格で動かす場合、Intel CPUと比較するとあまり省電力とは言えませんが、cTDP(Configurable TDP)の設定変更により消費電力を抑えることが可能です。

 cTDPはAMDのみの機能で、BIOS(UEFI)側でCPUの動作クロックや電圧を制御することでTDPを変更可能にしています。動作クロックや電圧を手動で個別に変更することは可能ですが、自動で行ってくれる点はcTDPのほうが安全で便利です。

 先程の表の数値データではCPUの比較がしにくいため、ベンチマークの数値を以下で棒グラフにしてみました。前面の棒グラフがシングルコア、背面がマルチコアの結果になります。

PassMark ベンチマーク結果

PassMark ベンチマーク結果

 安価に録画サーバーを作りたい場合、Pentiumがおすすめです。PCの組み方にもよりますが、24時間稼働させても電気代は月額400円前後だと思われます。

 おすすめはPentium G5400です。

 消費電力を多少犠牲にして性能を求めるなら、Core i3 8100とCore i5 8400がおすすめです。Core i3とi5の中ではこれらのコストパフォーマンスが高いです。


 なお、私が作成したCore i5 6600を使用した録画サーバ(SSD+HDD+PT3+PT2の構成)の消費電力は、アイドル時で35W以下、エンコード時は60Wから80Wになります。しかし、エンコードを頻繁に行ってはいないので、平均すると40W程度におさまっています。これだと電気代の月額が600円程度で済みます。

 CPUは性能や予算額によって決めることが多いと思いますが、運用方法や電気代なども考慮して決めるのが良いでしょう。

録画サーバに必要なパーツ

 ここからは録画サーバのおすすめパーツの紹介です。

TVチューナー

 よく知られた録画サーバソフトと利用可能なTVチューナーの対応表を作ってみました。

OS 録画サーバソフト TVチューナー
Linux foltia ANIME LOCKER PT3, PT2
PX-W3U4、PX-W3PE4等
Linux Chinachu PT3, PT2
PX-W3U4、PX-W3PE4等
Linux epgrec UNA PT3, PT2
PX-W3U4、PX-W3PE4等
Windows TVTest+TVRock PT3, PT2,
PX-W3U4、PX-W3PE4等

 2017年頃まではLinux用のドライバが揃っていなかったため、foltia ANIME LOCKER以外ではPT3とPT2ぐらいしか使えませんでした。しかし、現在発売中のPLEXのTVチューナーならLinux用ドライバが存在するため、どの録画サーバソフトも対応TVチューナーに差はほぼありません。

 2016年までの一番のおすすめはPT3(2016年3月販売終了)でした。以前は約1万円で購入できたのですが、今はオークションサイトで3万円前後で取引されています。

 PT3の後継機を期待する声もありますが、PT3販売元のアースソフトが後継機を作る予定はないらしく望み薄です(ただしソースは2ch:アースソフト長田社長のメール画像)。多分PT4は発売されません。

 Windowsで録画サーバを作る場合、PT3にこだわる必要はありません。チューナーを制御するBonDriverに対応していれば基本的には何でも良いです。

 何でも良いと書いておきながら、現状購入可能ないわゆるTS抜きの可能なチューナーは、ほぼPLEX社の製品のみです。




 これら4製品は2017年10月にLinux用のドライバも提供開始されたため、Linuxでも使用可能です。

 紹介したPLEXの4製品ともUSB接続です。PX-W3PE4とPX-Q3PE4は一見するとPCI Expressのチューナーカードです。しかし、PCI Expressバスは電源供給のみなので、マザーボード内部のUSB端子に接続する必要があります。大抵のマザーボードには基板上にUSB端子があるはずですが、PX-W3PE4とPX-Q3PE4の購入前にマザーボードを確認して下さい。

 実際に私がPX-W3PE4を購入して使ってみた感想ですが、マザーボード内部のUSB端子に接続するのはデメリットが大きいなと思いました。なぜなら、PCケース前面のUSB端子が使えなくなってしまったからです。

 そのため、PX-W3U4やPX-Q3U4の外部USB接続タイプのほうが、接続が簡単でデメリットもあまりないので、そちらの方が良いように思います。

 ここまでで紹介したチューナーがどのOSで利用可能か対応関係を改めて表にしました。

チューナー Windows 10 foltia
(CentOS6.10)
一般的な
Linux
PT3
PX-W3U4 ○※
PX-W3PE4 ○※
PX-Q3U4 ○※
PX-Q3PE4 ○※

 表で※を付けたPLEXのチューナーは、2017年10月からLinuxのドライバの提供が開始されたおかげで、一般的なLinux(Ubuntu、Debian、CentOS)でも使用可能になっています。ただし、ソースコードではなくバイナリファイルによる提供のため、特定バージョンのLinuxカーネルで動かす必要があります。

 Linuxについて詳しくない人向けに説明すると、Linuxのドライバは、そのドライバをコンパイルしたカーネルのバージョンでしか動かせないようになっています。そのため、ソースコードからコンパイルできないバイナリファイルのドライバは、Linuxのカーネルバージョンを指定されたものにする必要があります。

 ただし、PLEXのチューナーは非公式ドライバも存在します。こちらはソースコードが公開されているので、自分でドライバをビルドする手間はかかりますが、カーネルバージョンに関わらずどのLinuxでも動作します。また、x86系のPCだけでなくARM系のRaspberry Piでも動作するようです。

 当ブログでPX-W3U4、PX-W3PE4、PX-Q3U4、PX-Q3PE4をChinachuで使用可能にする方法を記事しました。以下の記事をご覧下さい。

ICカードリーダー

 録画サーバにはB-CASカードを読み込むICカードリーダーが別途必要になります。

 なお、PLEXの製品はICカードリーダーが内蔵されていますが、この内蔵リーダーのLinux用ドライバがないため、foltiaや一般的なLinuxではこのスロットは使えません。Windowsでは内蔵のICカードリーダーを使用できますが、Linuxでは別途用意する必要があります。

 以降、Linuxで動作確認がされているICカードリーダーを紹介します。もちろん、Windowsでも動作します。

その他

 アンテナから分配器を通してTVチューナーに接続する場合、アンテナレベルがどうしても下がってしまいます。理論的には2分配器なら2分の1、4分配器なら4分の1に減衰します。

 それを出来る限り抑えるため、分配する前にブースターでアンテナレベルを上げておいたほうが良いです。

 ブースターはこちらをおすすめします。BS・CS・地デジの全てに対応しており、値段も手頃です。私も使用していますが、このブースターを使い始めてから悪天候時にBS・CSが受信できなくなる現象はなくなりました。

 ユーザー評価が高いのはDXアンテナのこちらのブースターです。

 混合器にも分波器にもなるこちらの製品もおすすめです。接続方向によってどちらでも使用可能です。

おまけ(おすすめ記事)

 Linux限定ですが、本ブログでは録画サーバ関連の記事を多数書いています。「録画サーバ記事まとめ」にてまとめています。よろしければ、そちらもご覧ください。