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自作PCのCPUの選び方 - コストパフォーマンスの観点で考える

  最終更新日:2019/07/16

CPUの選び方

 PCを自作する時にどのCPUを選ぶか、誰しも悩むことと思います。コストパフォーマンスの観点でCPUの選び方を考えてみました。

 情報が出来るだけ古くならないよう、本記事は不定期に更新しています(最終更新日:2019年07月15日)。

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CPUのコストパフォーマンスとは?

 「CPUのコストパフォーマンス」とは、価格に対する性能の評価、つまり費用対効果としてどれぐらいの性能が得られるかを評価することです。

 値段が安くて高性能だと「コストパフォーマンスが良い」、逆に高くて性能が低いと「コストパフォーマンスが悪い」と言われます。高価なCPUは大抵性能も高いですが、出来れば高性能なCPUを安く買いたいものです。

 しかし、ここで悩みます。さて、CPUのコストパフォーマンスをどう評価すれば良いのでしょうか。

 まず、CPUの性能はベンチマークソフトで分かります。ここでは代表的なベンチマークソフトとしてPassMarkのCPUベンチマーク結果を紹介します(以降の数値はリンク先のデータを主に流用)。

 以下でグラフにしてみました。前面の棒グラフがシングルコア、背面がマルチコアの結果になります。

PassMark - CPUベンチマーク結果

PassMark - CPUベンチマーク結果

 CPUの世代交代が進んでいるため、Intel CPUは第8世代のCoffee Lake以降、AMD CPUは第2世代のZen+以降に限定しています。

 IntelのCore iシリーズは8,000番台から9,000番台に移行したものの、あまり性能向上していません。より高性能なCPUとしてCore i9が登場しましたが、簡易水冷でないと冷却が難しいなどの報告が発売当初は多く、AMDのRyzenに対抗するためにかなり無理をしてリリースした印象があります。

 Ryzenは2,000番台から3,000番台に移行して大幅に性能がアップしています。以前は一番高性能なCPUはIntelが独占していましたが、3,000番台に入って完全にIntelを追い抜いてしまいました。

 Ryzenが登場する以前、Intelの一般消費者向けのCPUは最大4コアでした。AMDから仕掛けられたマルチコア戦争にIntelは対抗し続けていましたが、プロセスルールの微細化が進まず(Intelの14nmに対しAMDは7nm)、2017年に見つかった脆弱性対策で思うように性能も向上していないように見え、ついにAMDに敗れてしまいました。

 次に2019年07月15日時点の各CPUのネット最安値を元にコストパフォーマンスを計算します。計算式は以下を使用します。

  • (CPUのコストパフォーマンス) = (ベンチマークの結果) ÷ (最安値) × 1000

 最後に1000倍した理由は、そのままだと小数点以下の数値になるためです。この計算で分かることは、各CPUの1000円分のベンチマーク結果です。つまり、1000円分でどれだけの性能を発揮できるのかが分かります。

 この計算式で求めた値が高いほど「CPUのコストパフォーマンス」が高いことになります。

 計算の前に価格.comの2019年07月15日時点の各CPUの最安値をグラフ化したものが以下になります。なお、記事の最後に各CPUのベンチマーク結果と最安値をまとめた表を掲載しています。

CPUの最安値(2019年07月15日)

CPUの最安値(2019年07月15日)

 さて、縦軸に「ベンチマーク結果」、横軸に「CPUのコストパフォーマンス」を取ってグラフ(散布図)を描いてみます。

PassMark基準によるコストパフォーマンス比較

PassMark基準によるコストパフォーマンス比較

 縦軸を上に行くほど性能が高く、横軸を右に行くほどコストパフォーマンスが良くなります。従って、グラフの右上に行くほど性能が高くコストパフォーマンスの良いCPUと言うことになります。

 なお、Core i7 9700KなどのIntelのオーバークロック対応製品はCPUファンが付属しないため、上図のグラフで示したよりも実際のコストパフォーマンスは悪くなります。

 上のグラフから読み取れることは次の通りです。

  • IntelよりAMDのCPUの方がコストパフォーマンスが良い(Intelが左半分、AMDが右半分に集中している)
  • Intelは狭い範囲に点が集中している(特にCore iシリーズ)
  • AMDは広範囲に点が散らばっている

 点の散らばり方について、より散らばっているほうが消費者は選択肢が多くなるため、今はAMDのほうが消費者の目的に合ったCPUを選びやすい状況になっていることが分かります。

 Intelは新バージョンのCore iシリーズを毎年発売していますが、Celeron、Pentiumは2018年4月以降に新しいCPUを発売できていません。

 Core iシリーズでも今まで発売していなかった内蔵GPUを省略したCore i3 9100Fのような製品もあり、製造面で苦労していることが伺えます。Core i7 9700では型番の末尾が無印、F、K、KFと4種類もあり、消費者的には分かりにくいと思います。

 AMDは2020年に登場予定のZen3の開発も順調らしいので、Intelがよほど画期的なCPUを開発しない限り、しばらくはAMDが優位な状態を維持しそうです。

コストパフォーマンス的におすすめのCPU

PassMark基準による高コストパフォーマンスCPUの選択

PassMark基準による高コストパフォーマンスCPUの選択

 コストパフォーマンス的におすすめのCPUを性能・価格別に選びました。

  • ハイエンド(高性能)
    • Ryzen 7 3700X
    • Core i7 9700KF
  • ミドルレンジ(中堅クラス)
    • Ryzen 5 3600
    • Core i5 9600K
    • Core i5 9400F
  • ローエンド(低価格)
    • Ryzen 5 2400G
    • Athlon 220GE
    • Pentium G5400

 以降でそれぞれのCPUに関してもう少し掘り下げて説明します。

 ただし、コア数やクロック周波数などの細かなカタログスペックについてはこの記事で説明しません。

 この記事を読まれている皆さんが気にされているのは、最終的に自作したPCが体感的に速いか遅いかの違いだと思います。そのため、以降で説明するのは主に体感的なことになります。

ハイエンド(高性能)


 ハイエンド(高性能)の分類からはRyzen 7 3700XとCore i7 9700KFを選びました。

名前 最安値 PassMark
Ryzen 7 3700X \42,984 23926
(2934)
Core i7 9700KF \42,800 17119
(2806)

 ハイエンドから選ぶならRyzen 9 3900XとCore i9 9900Kになるかもしれませんが、コストパフォーマンスで考えるとこの2つになります。

 Ryzen 7 3700XはTDPが65Wとオーバークロックも可能で高性能なのに消費電力が少ないのが特徴です。3,000番台のRyzenの中ではワットパフォーマンス(消費電力1ワット当たりの性能)が1番良いのではないでしょうか。

 Core i7 9700KFは内蔵GPUが省略されており、その分の価格が安くなっています。Core i9 9900Kは簡易水冷でないと冷却が難しいですが、Core i7 9700KFなら空冷でも大丈夫です。自作初心者にも扱えるCPUと言えます。

ミドルレンジ(中堅クラス)



 ミドルレンジ(中堅クラス)の分類からはRyzen 5 3600XとCore i5 9600K、9400Fを選びました。

 ゲーミングPCを自作する場合、最低限このミドルレンジクラスのCPUが欲しいところです。

名前 最安値 PassMark
Ryzen 5 3600 \25,898 20066
(2848)
Core i5 9600K \28,061 13520
(2681)
Core i5 9400F \18,974 12160
(2394)

 Ryzen 5 3600はIntel CPUからするとハイエンドと言っても良い性能です。メーカーに特にこだわりが無ければ、今回選んだCPUの中では性能、価格の面でベストの選択です。

 Intel CPUの場合、性能を求めるならCore i5 9600K、性能はそこそこで価格を抑えたいならCore i5 9400Fの選択になります。

ローエンド(低価格)



 ローエンド(低価格)の分類からはRyzen 5 2400G、Athlon 220GE、Pentium G5400を選びました。GPUを内蔵しているCPUを基準に選んでいます。

 このクラスのCPUは、ブラウザやメール、動画を見たり、Microsoft Officeを使うなどの用途に向いています。当然ですが、重いアプリや最新のゲームを遊ぶのには向いていません。

 消費電力が低いので、小規模なサーバーを作るのにも向いています。

名前 最安値 PassMark
Ryzen 5 2400G \14,079 9316
(1943)
Athlon 220GE \5,978 5252
(1731)
Pentium G5400 \7,536 5196
(2181)

 Ryzen 5 2400Gの内蔵GPUの性能はGeforce GT1030相当なので、Minecraft、ドラクエX、ファイナルファンタジーXIVなど少し古いゲームを遊ぶのであれば十分な性能と言えます(多少解像度を落とす必要はあるかもしれませんが)。

 同じくGPU内蔵のRyzen 5 3400Gも登場しましたが価格がまだ高いです。2400Gと3400Gを比較するとCPU性能は約10%上がったものの、GPU性能はほぼ変わりません。そのため、2400Gのほうがコストパフォーマンス的には優れています。

 Athlon 220GEは性能は低いですが、低消費電力なので24時間稼働のサーバーなどに向いています。もちろん普段使いのPCに使っても良いでしょう。

 Intelで選ぶならこのクラスではPentium G5400になります。以前はCeleronも選択肢に入れていましたが、Athlonより価格、消費電力の面で劣るため選びませんでした。

 Core i3 9100Fもコストパフォーマンス的には非常に良いのですが、GPUを内蔵していないため選択肢から外しました。この場合、グラフィックボードを別途購入しなければなりませんが、i3 9100Fとの組み合わせではゲーミングPCを自作するにしても性能的にいまひとつかなと思います。Core i5以上のほうがバランスが良い気がします。

IntelとAMD、どちらのCPUを購入するべきか?

 ここまでの説明でAMDのCPUを購入するほうが良いと思われたはずです。

 この記事で提示したグラフでは、確かにAMDはIntelよりもコストパフォーマンスが良いです。しかし、PassMarkと言うひとつのベンチマーク結果を元にしているだけなので、あらゆる状況でAMDがIntelを上回っているとは言い切れません。とは言え、Core i9 9900KがRyzen 9 3900Xを上回るケースは多くないと思いますが……。

 まだIntel CPUに最適化されたソフトウェアも多いため、使用するソフトウェアが限定される場合、Intel CPUのほうが良いかもしれません。

 実際にZen2では最新のLinux(Ubuntu 19.04等)が起動しない問題が報告されています。こちらはBIOSの更新で修正されるようですが、Zen2は発売されたばかりなので安定するまで時間がかかると思われます。

 この記事ではAMDのCPUのほうがコストパフォーマンスに優れているのでAMDをおすすめしますが、好みの問題もあるため、自分が満足できればAMDでもIntelでもそれがベストな選択だと思います。

 最後までこの記事を読んで頂きありがとうございました。

 今後も新しいCPUが発売されるごとに記事を更新する予定です。

おまけ

CPUの簡易仕様、ベンチマーク結果、最安値の一覧表

 2019年07月15日現在の本記事で取り上げた全CPUの簡易仕様、ベンチマーク結果、最安値を一覧表にまとめました。

 表を掲載する前にあらためてベンチマーク結果のグラフを載せておきます。

PassMark - CPUベンチマーク結果

PassMark - CPUベンチマーク結果

 CPU名のリンク先は各CPUの仕様ページです。最安値のリンク先はAmazonの商品ページです。なお、最安値=Amazon価格ではないのでご注意下さい。

CPU Clock
(Boost)
Core
(Thread)
TDP PassMark 最安値
Celeron G4900 3.1(-)GHz 2(2) 54W 3269(1792) \4,860
Celeron G4920 3.2(-)GHz 2(2) 54W 3192(1805) \7,950
Pentium G5400 3.7(-)GHz 2(4) 54W 5196(2181) \7,536
Pentium G5500 3.8(-)GHz 2(4) 54W 5195(2158) \12,780
Pentium G5600 3.9(-)GHz 2(4) 54W 5660(2257) \14,779
Core i3 8100 3.6(-)GHz 4(4) 65W 8032(2100) \14,579
Core i3 8300 3.7(-)GHz 4(4) 62W 8690(2167) \19,900
Core i3 8350K 4.0(-)GHz 4(4) 91W 9221(2336) \21,550
Core i3 9100 3.6(4.2)GHz 4(4) 65W 9043(2409) \17,980
Core i3 9100F 3.6(4.2)GHz 4(4) 65W 9059(2430) \10,872
Core i3 9350KF 4.0(4.6)GHz 4(4) 91W 10458(2563) \21,578
Core i5 8400 2.8(4.0)GHz 6(6) 65W 11647(2336) \21,083
Core i5 8500 3.0(4.1)GHz 6(6) 65W 11912(2409) \23,926
Core i5 8600 3.1(4.3)GHz 6(6) 65W 12615(2507) \30,980
Core i5 8600K 3.6(4.3)GHz 6(6) 95W 12763(2514) \31,974
Core i5 9400 2.9(4.1)GHz 6(6) 65W 11826(2359) \22,547
Core i5 9400F 2.9(4.1)GHz 6(6) 65W 12160(2394) \18,974
Core i5 9600K 3.7(4.6)GHz 6(6) 95W 13520(2681) \28,061
Core i5 9600KF 3.7(4.6)GHz 6(6) 95W 13991(2750) \28,959
Core i7 8700 3.2(4.6)GHz 6(12) 65W 15156(2630) \35,233
Core i7 8700K 3.7(4.7)GHz 6(12) 95W 15960(2701) \42,717
Core i7 8086K 4.0(5.0)GHz 6(12) 95W 16695(2831) \62,900
Core i7 9700 3.0(4.7)GHz 8(8) 65W 15807(2702) \43,787
Core i7 9700F 3.0(4.7)GHz 8(8) 65W 15566(2674) \40,999
Core i7 9700K 3.6(4.9)GHz 8(8) 95W 17188(2819) \45,890
Core i7 9700KF 3.6(4.9)GHz 8(8) 95W 17119(2806) \42,800
Core i9 9900 3.1(5.0)GHz 8(16) 65W 19296(2888) \56,670
Core i9 9900K 3.6(5.0)GHz 8(16) 95W 20216(2898) \56,775
Core i9 9900KF 3.6(5.0)GHz 8(16) 95W 20761(2928) \56,919
Ryzen 5 2600 3.4(3.9)GHz 6(12) 65W 13508(2006) \15,787
Ryzen 5 2600X 3.6(4.2)GHz 6(12) 95W 14374(2144) \20,484
Ryzen 5 3600 3.6(4.2)GHz 6(12) 65W 20066(2848) \25,898
Ryzen 5 3600X 3.8(4.4)GHz 6(12) 95W 20631(2923) \32,183
Ryzen 7 2700 3.2(4.1)GHz 8(16) 65W 15008(1993) \24,734
Ryzen 7 2700X 3.7(4.3)GHz 8(16) 105W 16976(2192) \27,377
Ryzen 7 3700X 3.6(4.4)GHz 8(16) 65W 23926(2934) \42,984
Ryzen 7 3800X 3.9(4.5)GHz 8(16) 105W 25022(2994) \50,738
Ryzen 9 3900X 3.8(4.6)GHz 12(24) 105W 32025(2903) \64,584
Athlon 200GE 3.2(-)GHz 2(4) 35W 4935(1629) \5,810
Athlon 220GE 3.4(-)GHz 2(4) 35W 5252(1731) \5,978
Athlon 240GE 3.5(-)GHz 2(4) 35W 5411(1838) \6,848
Ryzen 3 2200G 3.5(3.7)GHz 4(4) 65W 7307(1837) \9,780
Ryzen 3 3200G 3.6(4.0)GHz 4(4) 65W 7999(2062) \12,744
Ryzen 5 2400G 3.6(3.9)GHz 4(8) 65W 9316(1943) \14,079
Ryzen 5 3400G 3.7(4.2)GHz 4(8) 65W 10239(2097) \20,303