*

『驚愕のラスト5分』を確かめに映画「手紙は憶えている」を観に行きました【ネタバレ注意】

  最終更新日:2016/12/03

手紙は憶えている

 映画「手紙は憶えている」を観に行った感想です。映画館で配っていたチラシに「驚愕のラスト5分、あなたは見抜けるか?」とあったので、あらすじの内容も確認して面白そうだなと思いました。多少ぼかしていますが、ネタバレを含むのでご注意下さい。

スポンサーリンク

あらすじ

 初期の認知症を患う90歳の主人公ゼブ。最愛の妻ルースを1週間前に亡くした事をたびたび忘れるほど症状がひどくなっていた。その日、親友マックスから1通の手紙を託される - 「亡き妻と私に誓ったことを覚えているか?君が忘れていることを手紙に全て書いた。約束を果たして欲しい」

 アウシュビッツ強制収容所で一緒だったゼブとマックスはナチスに家族を殺されていた。車椅子生活で自由に動けないマックス。ゼブはマックスの手紙に従い、名前を偽っている元ナチス容疑者ルディ・コランダーを探す。ルディ・コランダーの名前を持つ容疑者は4人。目覚めるたびに記憶を失うゼブは犯人の元にたどり着けるのか。

 原題は”Remember”です。これを「手紙は憶えている」と言うタイトルにしたのは上手いなと思いました。

感想

 星5つ評価の星4つです。『驚愕のラスト5分』がどうにも気になって、実は結末を予想していました。「主人公が追っている人物は××なのでは?」と予想した所、見事に当たってしまいました。ミステリー小説の叙述トリックでたまにあるパターンなので、外れて欲しいなと思っていたのですが……。映画を見終わってから予告編の動画を見たら、これを見ても分かる人には分かってしまう気がしました。やはり予告編は見ないほうが良いと改めて思いました。大抵の場合、ネタバレが多すぎます。

 ただし、予想が当たったとは言っても変化球で来られたので、「あっ、そう来たか」と言う感じでした。詳細まではさすがに読めてませんでした。

 そんな訳でそんなにラストに驚かなかったのもあり、星4つ評価です。しかし、非常にストーリーが練られており、最後までどんな方向に進むか読めなかったです。予備知識なしで見たほうが良かったなと思った作品です。もし他人に勧めるなら、「まあ面白いから見てよ」と何も教えずに勧めるのが良いと思います。

 主人公が目覚めて妻を探して不安定になる場面、子供との会話でなごむ場面、容疑者と対峙する緊迫した場面とストーリーに様々な緩急があり、最後まで楽しめました。主人公の記憶が曖昧で手紙が記憶の拠り所としてストーリーの中心にあるのも斬新で面白いなと感じました。

 認知症の主人公と言う不安定な役柄ですが、俳優のクリストファー・プラマーの演技は良かったです。アカデミー賞助演男優賞俳優は伊達ではありません。ちなみに、マックス役のマーティン・ランドーも過去にアカデミー賞助演男優賞を受賞しています。

 この映画では主人公の内面は一切描かれないので、口調や仕草でしか推し量ることができません。そのため、ラストシーンで主人公は自分のことが本当に分かっていたのかどうかを考えさせられました。映画とは言え、人間の記憶は自分の都合の良いように書き換えられてしまうのかなと恐ろしく思います。

 映画を見終わって改めて思い返してみたのですが、結末のヒントが途中に提示されている事に気付きました。

  • 囚人番号の入れ墨のデザインの違い
  • 初めて銃を持ったはずなのに射撃が上手い
  • 作曲家リヒャルト・ワーグナー(ヒトラーが心酔)

 他にも合ったかもしれませんが、私が気付いたのはこれだけです。大型犬を恐れるのも該当するかもしれませんが、ヒントとしては分かりにくいです。

 劇中ではシャワーヘッドがたびたびアップで描写されていました。主人公が服を着たままシャワーを浴びたり、脱ぎ捨てた服が浴槽に残されたままなのも含めて、アウシュビッツ強制収容所のガス室を連想させるものでした。ユダヤ人大量虐殺のホロコーストが映画のテーマのひとつになっていますが、全て現代の場面しか出てこないのが面白いと感じました。

 手紙を書いたマックスが4人の容疑者の居場所に順番に主人公を誘導する訳ですが、マックスはナチスの疑いのある人物を最初から分かっていたのではないかと思いました。居場所と人物が特定できて調べられないはずがないです。そこまで考えると、マックスはどこまで筋書きと結末を想定していたのだろうかと怖くなってきます。ラストは子供たちの目の前の出来事ですし……。戦争犯罪、マックスにとっては家族を殺された恨み、民族を虐殺された恨みもあったでしょうから、自分の命が尽きる前の執念が成し遂げた事だったのでしょう。

 主人公のゼブの立場から見ても、マックスの立場から見ても色々と考えさせる作品でした。結末を知った上で見返してみると初見で気づかなかった発見があるかもしれません。

パンフレット

手紙は憶えている パンフレット

手紙は憶えている パンフレット

 価格は税込み720円、サイズはB5(257×182mm)です。全26ページ、カラーとモノクロページの混在です。映画のシーンを多用したページはカラー、解説やインタビュー等の文字が多いページはモノクロになっています。

 表紙は見て分かる通り、カナダとアメリカの間の地図で4人のルディ・コランダーの居場所にピンが刺さっています。そう言えば、劇中に地図は登場してなかったような。あれもある意味演出だったのでしょうか。

 ちなみに、ページ端に書かれている英文がこの映画の本質を表している気がしました。

  • Dark truths will come to light.(暗い真実はいずれ明るみになる)
  • It’s never too late for revenge.(復讐を求めるのに遅すぎるということはない)

 内容は次の通りです。

  • あらすじ
  • キャスト&スタッフ解説
  • キーワード説明
  • ホロコースト&ナチス関連の解説
  • 映画ライター、評論家らによる記事
  • インタビュー(監督、ゼブ役、マックス役)
  • プロダクション・ノート

 価格は安くはないですが、一般的なパンフレットの価格なので、映画を気に入ったなら買って損はないと思います。