*

原作全巻読破済み!映画「サクラダリセット 前篇」を観に行きました

  最終更新日:2017/05/30

サクラダリセット 前篇

 映画「サクラダリセット 前篇」を観に行った感想です。本作は、2012年に完結したライトノベル作品を映画化したものです。完結から5年も経って実写で映画化されるとは思ってもみませんでした。

 本記事ではあらすじやキャラクターについて触れていますが、致命的なネタバレは特にありません。

スポンサーリンク

原作について

 『サクラダリセット』は、河野裕著作のライトノベルです。2009年にスニーカー文庫から第1巻が発売され、2012年発売の第7巻で完結済みです。なお、2016年に新装版として角川文庫からも発売されています。

 ジャンルは青春SFミステリーで、住人の半数が特別な能力を持つ咲良田(さくらだ)を舞台とした物語です。高校生である浅井ケイ(記憶保持能力)と春埼美空:はるきみそら(世界を最大3日分巻き戻せるリセット能力)を中心に物語は進みます。リセット前の記憶を保持できるのはケイだけなので、2人が揃って初めて意味がある能力です。

 サクラダリセットをひと言で説明するのは非常に難しいのですが、ケイと春埼、そして物語開始時点で既に死んでいる相麻菫:そうますみれ(能力不明)を含めた再生の物語です。映画では、ケイ達の通う高校の奉仕クラブ(能力を使って人助けをする部活動)に笹野という人物から依頼が来る所から始まります。

 原作小説は最初から設定をかなり作り込んでいる雰囲気があり、最終巻までで伏線は全て回収して終了したので、とても満足して読了した記憶があります。原作は全7巻なので、それほど時間をかけずに読めると思います。映画で興味を持たれた方には特におすすめです。

 原作本発売当時は漫画化もされ、次はアニメ化されるのかと思っていたら、冒頭に書いた通り2012年に完結して音沙汰なしだったので、もう終わりなんだなとがっかりしていました。しかし、すっかり忘れた頃に実写映画化とアニメも2017年4月から放送されると知り、本当にびっくりしました。

 映画化、アニメ化と嬉しい反面、どこまで原作に忠実に描いてくれるのだろうかと心配でもありました。特に実写となると原作を台無しにする作品が昨今多いだけに、不安を抱えつつ観に行きました。

感想

 映画の評価は、10点満点の8点です。2点マイナスな理由は、自分にとっては原作が10点であり、どうしても原作を超えられないからです。とは言え、原作ファンの目から見ても楽しめる作品でした。

 前篇は原作の4巻までの内容でした。ストーリーやキャラクターが原作からかなり削られているものの、うまく脚本をまとめていると思いました。冒頭に説明語りが多いので、人によっては少し分かり難いと感じるかもしれませんが、無理に1本の映画にせず、前篇/後篇に分けたことである程度余裕を持って物語を描けているのではないでしょうか。監督が脚本まで担当しているのも功を奏しているように思えます。

 イケメン俳優や人気の若手女優を配役しておけば良い的な作りではなく、原作のキャラクターや雰囲気を大事にしていると感じられました。映画の中心となる若手俳優陣について私は全く知らなかったのですが、原作のキャラクターとは雰囲気が異なるものの、映画としてのサクラダリセットの世界観に合っていると思いました。

 原作の雰囲気に一番近いと感じたのは、春埼美空役の黒島結菜でした。キャスティングの最初から彼女に決定していただけのことはあります。野村周平演じる浅井ケイは原作よりも硬い雰囲気がありましたが、冷静に周囲の人間を巻き込んで引っ張る様は本作にはまっていたと思います。

 相麻菫役の平祐奈は、原作の相麻菫ではなく映画版の相麻菫像を作り上げていた印象がありました。彼女は後篇で活躍するはずなので、後篇に期待です。

 若手俳優陣は全体的に良かったですが、魔女役の加賀まりこを始めとする脇を固めるベテラン俳優陣が要所を締めている感じがしました。若手だけだとどうしても作品が薄っぺらくなりがちなので、ベテランの演技で作品の重みが少し加わっていると思いました。

 ストーリーは能力者同士のバトルものと言う作品ではないので、映画でも同様に派手な要素はなく、淡々と進んでいく感じです。能力者が多く登場するのでSF要素に注目してしまうかもしれませんが、ミステリーの要素が強いので、物語を徐々に紐解いていく感じでしょうか。

 後篇は前篇とは違った展開になりそうですが、5月13日の公開まで期待して待ちたいと思います。

後篇について

 エンディングの主題歌が終わった後に後篇の予告がありました(Youtubeに同じものが上がってました)。予告のナレーションが声優の花澤香菜だったのに驚きでしたが、アニメ版の春埼美空を演じている関係で担当したのでしょう。後篇は前篇とは打って変わって派手(?)なシーンがあるようです。「原作にあったっけ?」と思いましたが……。

 後篇から登場する浦地正宗役の及川光博の演技にも期待です。予告編の及川光博の演技を見ると、原作よりも性格がぶっ壊れているように見えましたが……。

パンフレット

サクラダリセット 前篇 パンフレット

サクラダリセット 前篇 パンフレット

 価格は税込720円、サイズはA5(182×257mm)です。全34ページ、全ページカラーです。内容は次の通りです。

  • あらすじ
  • キャラクター相関図
  • キャストインタビュー
    • 野村周平 - 浅井ケイ
    • 黒島結菜 - 春埼美空
    • 平祐奈 - 相麻菫
    • 健太郎 - 中野智樹
    • 玉城ティナ - 村瀬陽香
    • 恒松祐里 - 岡絵里
    • 加賀まり子 - 魔女
  • その他のキャストプロフィール
  • 劇中場面写真
  • プロダクションノート
  • 監督インタビュー
  • 原作者インタビュー
  • 能力データ
  • 主題歌担当flumpoolコメント

 映画を面白く感じたならば買って損はない内容です。私は特に原作者インタビューが面白かったです。”サクラダリセット”と言うタイトルが、実は”サグラダファミリア”から来ていたのは衝撃でした(追記:後日再読して最終巻のあとがきで”サグラダファミリア”由来であることが書かれており、私が完全に忘れているだけでした)。映画公式ツイッターもよく見れば”@sagradamovie”となっています。前々から似ているなとは思っていたものの、そこから”サクラダ”の地名が生まれ、リセットの能力名をくっつけたそうです。

 キャストインタビューも読み応えがありました。当たり前ですが、役作りをしっかりして撮影に入っていることを伺えました。

アニメ化

 アニメ版は2017年4月5日放送開始です(上記は予告動画)。連続2クール放送(約半年)と言うことなので、原作の内容を漏れなく描いてくれそうです。映画では出番のなかった非通知くんや野ノ尾盛夏も登場するようです。

 キャラクターデザインが原作イラストの椎名優の絵柄から雰囲気が結構変わっているのが少し気になります。原作イラストでは瞳が大きめに描かれていたので、印象が違います(特に春埼)。

 こちらも始まってみないと何とも言えないので、期待して待つことにします。

全巻再読しての感想

 後篇を観る前になんとか原作を全巻再読しました。結果、かなりの部分を忘れていることを認識させられました。

 まず、サクラダリセットのタイトルが「サグラダファミリア」から来ていることは原作最終巻のあとがきで書かれていました。何より、最終巻の副題が”BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA”となっており、「サグラダファミリア」由来であることを今更驚く事が変でした。

 再読して映画の評価は変わらなかったものの原作と映画の2つ違いが気になりました。1つ目は浅井ケイが料理していること、2つ目は野ノ尾盛夏が登場しないことです。

 料理は最終巻付近である種の小道具的役割をしています。そのため、わざわざケイが料理するシーンを挿入したことは何か意味があるのかなと思いました。原作とは違うことを原作読者に知らせるためなのか、それとも単純に一人暮らしを観客に見せるための演出だったのか。

 野ノ尾盛夏は猫の動向を把握する能力を持っているケイの同級生です。彼女は本筋にあまり関わらないながらもキーマンになる存在です。そのため、映画の後篇でどうやって結末を付けるのかが気になりました。

 他にもいくつか気になる点があるのですが、その点は後篇を楽しみに待ちたいと思います。