*

原作本を読んで映画メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮を観に行きました

  最終更新日:2018/06/26

メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮

 映画メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮を原作本を読んでから観に行きました。原作とは別作品と言っても過言ではない内容になっていてびっくりしました。

 本記事ではあらすじやキャラクターについて触れていますが、致命的なネタバレは特にありません。ただし、前作のメイズ・ランナーに関するネタバレがありますのでご注意下さい。

 当ブログ内のメイズ・ランナーシリーズのその他の感想記事は以下の通りです。

スポンサーリンク

ストーリー

 前作でトーマス達は迷路から脱出し、WCKD(ウィケッド)の敵対組織に救出される。しかし、その組織のある秘密を知ってしまい、組織の施設から逃亡を図る。ストーリーを超簡単に説明するとこんな感じです。ストーリーの概要は原作とほぼ同じです。ただし、ストーリーの中身と結末がまるで異なります。

 原作との違いは改めて後述しますが、原作ではトーマス達はWCKDに最後までとことん翻弄されるのに対し、映画ではトーマス達はWCKDと敵対するレジスタンスのような描かれ方をしています。完結編となる3作目の”The Death Cure(邦題未定)”の内容が分からないので何とも書きようがないのですが、今作の結末が原作と映画で全く異なるので、次回作はどうなるんだろうと色々な意味で興味がわきます。軽く調べてみたら、どうも今作は原作の3作目の内容を少し含んでいるようです。おそらく、それが結末の違いにつながっているのでしょう。

 そもそも、1作目の段階で原作と結構違いがあったので、3作目までの映画のプロット(構想)はかなり練られているものと思われます。

2016年5月5日追記)
 残念なニュースが入ってきました。メイズ・ランナー3の撮影中に主演のオブライエンが負傷し、現在無期限の制作中断に入っています(‘The Maze Runner 3’ news 2016: ‘The Death Cure’ production indefinitely delayed)。

 撮影中の自動車事故により、脳震とう、顔にダメージもあるようです。今のところ公開日を延期すると20世紀フォックスは言っていませんが、この遅延により新たな公開日を告知するだろうとのことです。

2016年12月20日追記)
 主演のオブライエンは顔面骨折の重症だったようですが、2017年2月から撮影が再開されるとのことです。

 当初、3作目は米国で2017年2月17日公開予定でしたが、結局2018年1月12日に延期されました。2作目の公開から2年以上開いてしまうので、復習必須になるでしょう。その前にこのブログが存在しているかどうかのほうが私は心配ですが…

2018年1月15日追記)
 シリーズ3作目の日本公開が決定しました。2018年6月です。全米公開日も1月26日にずれてます。

 タイトルは「メイズ・ランナー:最期の迷宮」です。原題は”The Death Cure”なので、訳すと”死の治療薬”とするのが正しいと思いますが、配給元の20世紀FOXは最後まで「迷宮」で押すことを決めたようです。

 おそらく、翻訳小説の発売は公開1ヶ月前の5月になることでしょう。

邦題の「砂漠の迷宮」について

 邦題の「砂漠の迷宮」について少し触れておきます。原題は”The Scorch Trials”なので、正しくは「焦土の試練」と訳すほうが良いようです。「灼熱の試練」でも良いかもしれません。まあ、映画ではあまり暑そうには見えませんでしたが…。砂漠が出てくるから前作の迷路つながりで「砂漠の迷宮」としたのだと思います。

 ちなみに、原作の翻訳者である田内志文氏はあとがきでこう書いています。

そのまま訳すなら「焦土の試練」とでもいったところだろうか。個人的には好きなタイトルなのだが、映画第二弾の公開に合わせてこのようなタイトルになった。

 ここから分かることは、日本の映画配給会社に邦題の決定権があることです。と言うことは、3作目の翻訳本が発売されるのは3作目の公開直前になると思われます。つまり、2017年まで待たないと3作目の翻訳本は発売されそうにありません(原作は2011年に完結済み)。読者としては勘弁して下さいと言いたいです。この予想が外れることを期待します。

2016年12月20日追記)
 予言しておきましょう。1作目も2作目も原作の翻訳本は、日本での映画公開日の約1ヶ月前に出版されています。また、3作目は米国公開日の2018年1月12日から1ヶ月後ぐらいに日本で公開されるものと予想されるので、3作目の翻訳本出版日は2018年1月頃だと考えられます(この予言は結局外れました:2018年1月15日追記)。

 いずれにしろ、本はいかに初版で売るかが重要なので、3作目の公開がせまるまでは発売されないでしょう。

WCKDとは?

 感想を書く前に軽くWCKDについて説明します。

 WCKD(ウィケッド)とは、原作ではWICKED(忌まわしき者)となっているので、そこからIとEを抜いた言葉のようです。多分、WICKEDのままだとマイナスイメージになるので、それを避けたかったのでしょう。また、WICKEDは”World In Catastrophe:Killzone Experiment Department”の略で日本語訳は”破滅の世界:キルゾーン実験省”となっています。

 元々はウィルス感染症のフレアの治療方法を探すための研究機関のようですが、武装しており、治療方法を確立するためには手段を選ばず、やりたい放題しまくっています。原作ではフレア感染者を選別して隔離区域に放棄しています。

感想

 映画を観る前に原作の翻訳本をもちろん読みましたが、前作のDVDを借りての復習と今作の予告を見ておきました。予告を見た時点で原作とストーリーが違うことに気づいていたものの、良い意味で裏切られる展開でした。これは原作を読んでいないと分からない醍醐味です。原作ではWCKDに命令されて仕方なくセーフ・ヘブンと呼ばれる約160km先の地点を目指します。映画では逃避行となっていますが、目的地の地理的な位置は同じようです。途中経路も出会う人物もほぼ同じですが、映画のほうが緊迫感があり展開は面白いと感じました。

 前作は迷路という閉鎖空間での話だったので若者達の人間関係に焦点が当たっていました。今作は最初の保護施設から砂漠、廃墟と場所が次々に移動していきます。そのため、前作よりもストーリーの展開が早く感じられ、映画としてより楽しめる作品になっていると思います。

 今作では全力疾走するゾンビもどきの「クランク」が出てきます。その正体はフレアに侵されて重症化した病人です。原作で出るシーンは分かっているし、そろそろ出そうな雰囲気だなと分かっているのですが、それでも毎回びくっとなってしまいました。クランクは姿が一定ではなく、髪の毛がなく肌は肌色で青い血管が無数に浮き出ていたり、口の中がエイリアンのようだったり、ともかく非常に気持ち悪かったです。それが全力疾走して追ってくるのは結構緊迫感がありました。

 若手俳優陣は今作でも期待通りの演技を見せています。トーマス役のディラン・オブライエン、ニュート役のトーマス・ブロディ=サングスター、ミンホ役のキー・ホン・リーがやはり目立っています。とは言え、小説と違ってトーマスが主人公補正で突っ走る部分が多かったように思います。今なら週替りで入場者先着で彼らのポストカードがもらえます。

 おじさんがあまり出ない映画ですが、途中で出てくるホルヘには驚きました。原作ではヒスパニック系の若者だったのですが、映画ではおじさんになっています。また、一緒に行動しているブレンダとの関係性も親子のような関係になっていました。個人的には良い改変だと思います。(吹き替えの情報はWikiのページを参照)。

 映画全体の評価は星5つ評価の星3.5です。面白かったですが、最後の展開はどこかで見たことのある感じがして、星4つ付けるほどではない感じです。問題は次回の完結編です。終わりが駄作だと全てが駄目になるので、次に期待しましょう。

原作との違い

 原作と映画の違いを簡単にまとめました。

  • 原作
    • トーマス、テレサ、エリスはテレパシーで会話できる(WCKDによる外科手術で付与?)
    • 迷路から生きて脱出できたのは20人
    • トーマス達はフレアに感染しないことをWCKDから知らされていない
    • 世界に存在する迷路の数は2つだけ(男性のみ、女性のみのグループ)
    • フレアに感染しても潜伏期間が長い(多分年単位)
    • フレアで重症化しても知性が少しは残っている
  • 映画
    • テレパシーなんて存在しない
    • 迷路から生きて脱出できたのは9人
    • 1作目終盤でフレアに感染しないことをWCKDから知らされる
    • 世界に迷路が数多く存在する模様
    • フレアに感染すると数日で重症化する
    • フレアで重症化すると知性は失われゾンビとなる

 他にもありますが、ネタバレになってしまうものも多いので省略しています。

 映画の改変はほとんどが良い改変だと思います。例えば、原作では迷路から脱出したのは20人ですが、2作目でほとんど無意味に死んでいき、映画の人数とほぼ同人数になります。映画でも死ぬキャラクターはいますが、クランクに噛まれてフレアに感染して死ぬなど、クランクの危険性を知らせるための意味のある死です。そもそも、20人の半数以上が名前のないキャラクターなので、主要人物の描写に集中してしまうあまり、それ以外の人物はいるのかいないのか分からない場面が多いです。映画では、3部作の原作の要素を全て抽出して設定が良く練られているなと感じます。

 原作は行き当たりばったりでストーリーが進む感じで、ひとつひとつの出来事に意味があるような無いような雰囲気があります。前作同様に描写が甘いです。2作目まで読んでもWCKDの真の目的は不明なままです。映画ではフレアの治療方法を探すためと言う目的が提示されていますが、原作では謎に謎を重ねるような描き方で、どれが伏線なのかどうかも良く分かりません。本当に次で完結するのか心配になります。

 前半は無意味な死が続くせいで読むのが苦痛でしたが、後半はそれでも面白かったです。とは言え、なぜこの原作が欧米でそこまで人気があるのか私には分かりません。

 原作者には申し訳ないですが、映画になって良かったなと思う作品です。これは脚本家と監督の力によるものでしょう。この様に書いたら読みたいと思う人はいないかもしれませんが、映画とはかなり違う内容なので、興味のある方は読んでみて下さい。

パンフレット

 価格は税込み720円でした。全ページカラーです。トーマス役のディラン・オブライエンとテレサ役のカヤ・スコデラリオ、監督のインタビュー記事が掲載されています。その他にキャストがそれぞれのキャラクターについて語る記事があります。見開きで劇中写真が多く掲載されていますが、写真中心で情報量は少ないです。映画と若手俳優陣が気に入ったなら買いでしょう。