映画「リズと青い鳥」感想
最終更新日:2018/05/03
映画「リズと青い鳥」を観に行きました。久々に見に行って良かったと心の底から思える作品でした。
本記事はTVシリーズ2期を見ていることを前提で書いています。極力ネタバレが無いように書いたつもりですが、キャラクターやあらすじに触れている点があるのでご注意下さい。
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感想
10点満点で10点です。普段だったら気に入らない点のひとつやふたつは必ずあるものですが、本作に関しては全く無かったです。
本作は鎧塚みぞれと傘木希美の友情の行方を主題に据えた作品です。作中の架空の童話である『リズと青い鳥』を二人の関係性とだぶらせながら描いています。本作は原作から見ると本編の一部なのに、結果としてスピンオフとして描かれています。
キャラクターデザインが今までのTVシリーズと大幅に変わっていましたが、違和感は特にありませんでした。むしろ、童話のシーンと地続きである点を感じやすくなっていたり、登場人物たちの繊細な動きを表現するのに一役買っていたと思います。
原作の「北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」を昨年読みました。本作は主に後編に当たる部分に該当します。
それが映画化されると知った時、楽しみでもあり不安でもありました。基本的に今までは多少のアレンジはありつつも原作通りに描かれていたからです。主人公が黄前久美子から鎧塚みぞれ(以降みぞれ)と傘木希美(以降希美)の二人に変わる点も不安要素ではありました。
あの二人の関係性はいびつに見えます。みぞれは希美に対して一方的な恋愛に近い感情を抱いているのに対し、希美のみぞれに対する態度はあくまでも友達の中のひとりのそれです。
原作の2巻、アニメの2期第4話「めざめるオーボエ」で一応の決着は付いていますが、仲違いしていた前の状況に戻っただけで、周りから見ると不自然な関係であることは変わっていません。
最後まで観て感じたのは、ふたりの物語としてすっきり描かれていたと言うことです。原作では黄前久美子の野次馬根性(?)と重要なシーンに必ず顔を出す謎の力が働いているため、それが実はふたりの物語を描く上での雑音になっていたのではないかと思いました(原作の描き方が駄目だと言っているのではないです、念の為)。
原作では、ふたりのハグのシーンがみぞれと希美の一緒にいる最後の場面になるのですが、それが何となく物足りないと感じていました。その後のふたりがどうなったのかが気になったのです。それが描かれたのが映画の最後の歩くシーンでした。
冒頭の歩くシーン、これは最後も歩くシーンだろうなと思ったら案の定でしたが、歩くという単純な動作だからこそ、ふたりの関係性の変化を描くのは簡単なようで難しいと思います。
冒頭ではひとりで歩を進める希美をみぞれが追いかけていたのが、最後は2人の距離が縮まったように見えました。自分の見たかったシーンはこれなんだなと感じました。でも、まだ微妙にすれ違ってる感が残り、これから先も二人の友情関係が変わっていくのだろうと思える最後でした。
ひときわ感動したのは、終盤の「リズと青い鳥」の第三楽章のみぞれの演奏シーンです。あのシーンでは涙が流れました。演奏に感動したのもありますが、みぞれと希美の今までの関係が崩れてしまう悲しさもあったのかもしれません。
映画館でこのシーンではすすり泣く声が他にも聞こえていました。自分で涙した理由をうまく説明できないのですが、『リズと青い鳥』を象徴するシーンをあそこまで昇華し切った点は素晴らしいと思います。
最後に、この作品は何度でも観たいと思える作品でした。むしろ、繰り返し見ないと全てを感じ取れないような気がします。
パンフレット
価格は税込み千円、サイズはB5サイズ(182×257mm)です。全ページカラーです。
過去の劇場版では横長のA5サイズ(210×297mm)でしたが、本作はスピンオフ作品と言うこともあってか、がらっと変えてきた印象です。
対談記事や声優、スタッフのインタビューが中心の作りで読み応えのある内容です。ファンなら買って損は無いでしょう。
パンフレットの内容は以下の通りです。
- 監督 山田尚子 コメント
- 原作 武田綾乃 コメント
- あらすじ
- 監督 山田尚子×脚本 吉田玲子 対談
- キャラクター紹介
- 鎧塚みぞれ(CV.種崎敦美)
- 傘木希美(CV.東山奈央)
- 種崎敦美×東山奈央×監督 山田尚子 討論
- キャラクター紹介、コメント
- 中川夏紀(CV.藤村鼓乃美)
- 吉川優子(CV.山岡ゆり)
- 剣崎梨々花(CV.杉浦しおり)
- その他キャラクター、キャスト紹介
- 童話 リズと青い鳥
- あらすじ
- 吹奏楽曲『リズと青い鳥』作曲者解説、コメント
- リズ/青い鳥(CV.本田望結)キャラクター紹介、コメント
- キャラクターデザイン 西屋太志 インタビュー
- スタッフコメント
- 楽器設定 髙橋博行
- 色彩設計 石田奈央美
- 美術監督 篠原睦雄
- 撮影監督 高尾一也
- 3D監督 梅津哲郎
- 音響監督 鶴岡陽太
- 音楽情報
- 音楽 牛尾憲輔 コメント
- メインテーマソング Homecomings コメント
- 原作イラスト アサダニッキ
完全新作映画2作目
本作『リズと青い鳥』に続いて2018年中に完全新作映画が公開される予定です。
2年生に進級した黄前久美子たちの物語になると言うことなので、おそらく原作の『波乱の第二楽章 前篇』の内容が中心となった作品になるのではないかと思われます。
久美子たちの活躍を見られるのも楽しみですが、新1年生や吉川優子部長の奮闘ぶりなど楽しみな要素が満載です。
原作ではすでに吉川優子たち3年生の卒業式までが描かれています。原作では伏線が張り巡らせているので、久美子たちが3年生になった後の展開にも期待したい所です。映画も良いですが、TVシリーズも見てみたいなと……。
参考サイト
本記事を書く上で参考にさせて頂いたサイトを紹介します。特に山田尚子監督と原作を書かれた小説家の武田綾乃さんの対談は必読です。